高市早苗総裁時代に突入。地獄の中で、ささやかな喜びを見つける方法【適菜収】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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高市早苗総裁時代に突入。地獄の中で、ささやかな喜びを見つける方法【適菜収】

【連載】厭世的生き方のすすめ! 第13回

 

◾️小さなことに喜びを見出す

 

 世の中、暗いニュースが多い。街を歩けばロクでもないことばかり。生きていて本当に面白いと思えることはあまりない。それでもごくたまに面白いことが発生する。「僥倖」という言葉もある。だから「なにもしないで待ってみる」のもいい。

    *

 今年の3月、煮魚がおいしい店を見つけた。夜は割烹料理屋で、不定期でランチをやっている。ランチの煮魚は1日5食限定で、安くて味は洗練されている。私は魚が好きなので、早めに行って煮魚を食べるようになった。たまに行列ができて煮魚が売り切れになることもあるが、そのときは仕方がないので別のメニューにする。

    *

 通っているうちにいろいろなことがわかってきた。毎回必ずいる常連のジジイがいる。サングラスをよくかけている。なにをしている人間なのかわからないが、その店の煮魚の価値がわかるのだから、それほど変な人間ではないだろうと当初は思っていた。一度、そのジジイの後ろに並んでいるとき、汗臭くて仕方がなかったので、店の中ではなるべく離れて座るようにした。

    *

 そのうち腹が立つようになってきた。自分のことを棚に上げていえば、「毎回昼から煮魚を食いやがって」と。おそらくジジイも私のことを不審に思っていたと思う。「あいつはいつも来ているけど、昼間からなにをやっているんだ」と。

    *

 あるとき、ジジイが行列の6番目になった。私は5番目だった。私の前に並んでいる人が全員煮魚を注文したら、ジジイは煮魚にありつけなくなる。私は少し心が踊った。ジジイががっかりするところを見たくなったのだ。しかし私の2つ前に並んでいたおばちゃんが、天ぷら定食を頼んだため、その望みは絶たれた。

    *

 やがて「僥倖」が訪れた。先日その店に行くとジジイが並んでいなかった。珍しいこともあるなと思ったが、次に行ったときもいかなかった。翌週、店が空いていたので、店の女将に「いつも並んでいるサングラスのジイさん、最近見かけませんね」と言うと、女将は腕で大きなバッテンを作った。私が「なにかあったんですか」と聞くと、出入り禁止にしたという。女将が朝、店の前を掃除するとき、植えてある松の木の葉が切られていることに気づいた。以前にも同じことがあったので、警察に通報。防犯カメラをつけようかと相談していたときに、犯人はサングラスのジジイだったことが判明した。

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 一体何のためにそんなことをしたのか。松の木の形が気に入らなくて剪定するためにわざわざハサミを持参したのか。趣味人か。いずれにせよ、ジジイは行く場所を失い、煮魚を食うことができなくなったのである。

    *

 面白すぎる。世の中はまだ捨てたものではない。私は鬱々とした気分が吹っ飛び、なぜ犯人がサングラスのジジイだと判明したのか、肝心なことを聞きそびれてしまった。今度聞いておく。

 

文:適菜収

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高市早苗著『アメリカ大統領の権力のすべて』

★初の女性新首相・高市早苗「政治家の原点」がここにある★

アメリカ大統領の権力のすべて』待望の新装重版

 

民主主義国家の政治をいかに動かし統治すべきか?

◎トランプ大統領と渡り合う対米外交術の極意とは?

★政治家・高市早苗が政治家を志した原点がここにある!

 

「日本は、国論分裂のままにいたずらに時間を食い、国家意志の決定と表明のタイミングの悪さや宣伝下手が災いし、結果的には世界トップ級の経済的貢献をし、汗も流したにもかかわらず、名誉を失うこととなった。

 納税者としては政治の要領の悪さがもどかしく悔しいかぎりである。

 私は「国力」というものの要件は経済力」、「軍事力」、そして「政治力」だと考えるが、これらの全てを備えた国家は、現在どこにも存在しない。

 (中略)

 そして日本では、疑いもなく政治力」がこれからのテーマである。

 「日本の政治に足りないものはなんだろう?」情報収集力? 国会の合議能力? 内閣の利害調整能力?  首相のメディア・アピール能力?  国民の権利を保証するマトモな選挙?  国民の参政意識やそれを育む教育制度?

 課題は随分ありそうだが、改革の糸口を探る上で、アメリカの政治システムはかなり参考になりそうだ。アメリカの政治にも問題は山とあるが、こと民主主義のプロセスについては、我々が謙虚に学ぶべき点が多いと思っている。

 (中略)

 本書では、行政府であるホワイトハウスにスポットを当てて同じテーマを追及した。「世界一強い男」が作られていく課程である大統領選挙の様子を描写することによって、大統領になりたい男や大統領になれた男たちの人間としての顔やフッーの国民が寄ってたかって国家の頂点に押し上げていく様をお伝えできるものになったと思う。 I hope you enjoy my book.」

(「はじめに」より抜粋)

◉大前研一氏、推薦!!

 「アメリカの大統領は単に米国の最高権力者であるばかりか、世界を支配する帝王となった。本書は、連邦議会立法調査官としてアメリカ政治の現場に接してきた高市さんが、その実態をわかりやすく解説している。」

ALL ABOUT THE U.S. PRESIDENTIAL POWER

How much do you know about the worlds’s most powerful person―the President of the United States of America? This is the way how he wins the Presidential election, and how he rules the White House, his mother country, and the World.

<著者略歴>

高市早苗(たかいち・さなえ)

1961年生まれ、奈良県出身。神戸大学経営学部卒業後、財団法人松下政経塾政治コース5年を修了。87年〜89年の間、パット•シュローダー連邦下院議員のもとで連邦議会立法調査官として働く。帰国後、亜細亜大学・日本経済短期大学専任教員に就任。テレビキャスター、政治評論家としても活躍。93年、第40回衆議院議員総選挙奈良県全県区から無所属で出馬し、初当選。96年に自由民主党に入党。2006年第1次安倍内閣で初入閣を果たす。12年、自由民主党政務調査会長女性として初めて就任。その後、自民党政権下で総務大臣、経済安全保障大臣を経験。2025年10月4日、自民党総裁選立候補3度目にして第29代自由民主党総裁になる。本書は1992年刊行『アメリカ大統領の権力のすべて』を新装重版したものである。

 

 

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オススメ記事

適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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